「もう料理やめます」宣言から始まったライオンの新規事業「シェフトモ」の奇跡

2021.10.11 at Online
「もう料理やめます」宣言から始まったライオンの新規事業「シェフトモ」の奇跡

導入

ライオン株式会社の新価値創造プログラム「NOIL」から生まれた夕食テイクアウトサービス「シェフトモ」。LINEで近くの飲食店にバランス良い献立を週単位でまとめて注文し、自分のペースで受け取ることができるサービスだ。自身の生活における「不」から生まれ、拡大していった新規事業。一児の母として家事・育児に奮闘しながら「シェフトモ」サービス化に挑む廣岡茜氏に事業誕生の軌跡を聞いた。

 

index

1. 料理やめます宣言から生まれたサービス「シェフトモ」

2. 飽和市場での価格競争に疲弊。新しいチャレンジに渇望していた

3. シェフトモは、ライオンが目指す「習慣づくり」を実現できる

4. 忙殺されて得た、チームコミュニケーションの気づき

5. 社内攻略のコツは、「廣岡を応援するムード」を作ること

 

1. 料理やめます宣言から生まれたサービス「シェフトモ」

−まず「シェフトモ」の事業概要を教えてください。

コンセプトは、「あなたの街のおまかせネットワーク」。平日の料理に悩む方がLINEで近くの飲食店に夕食作りをおまかせできるというサービスです。

利用者はバランスの良い献立をシェフに作っていただくことができ、週単位でまとめて注文が可能。テイクアウト限定サービスのため、デリバリー時間に家で待機する必要がなく、自分のペースで夕食を取りに行くことができます。忙しい日々の中でも自分を大事にできる社会をつくるというビジョンを掲げており、可処分時間の創出をミッションにしています。

飲食店側のメリットとしては、リピート率・注文頻度の高いサービスのため、常連ができやすく、テイクアウトのためお客様の顔が見えるサービスとなっていること。コロナ禍でデリバリーが増えた中で、お客様とのコミュニケーションが減ったことは飲食店側のモチベーションダウンに繋がっていると聞きます。シェフトモはお客様の喜んでいる顔が実際に見えることがメリットの1つです。また、前の週に1週間分の注文数を把握できるため業務効率化にも繋がっています。

シェフトモは飲食店から販売金額の15%を手数料としていただくモデルで、2021年にベータ版で運用を開始。都内200店舗・登録者数6,000人を突破しており、2025年の全国展開を目指しています。

 

−サービスのアイデアはどのような経緯から生まれたのでしょうか?

夫の仕事が忙しく家事ができない現実があり、私自身が日々ワンオペで家事・育児に奮闘していました。中でも料理があまり得意ではなく、非常にストレスに感じていたんです。そこで家族に「もう料理やめます」と宣言をしました。

ただ、食べていかなきゃいけないのでどうしようかと考えて思いついたのが、保育園の近くにある飲食店に夕食づくりをお願いすること。「我が家の夕食を作ってもらえませんか?」とご相談したことが始まりでした。自分の生活上の最大の「不」である料理にフォーカスしたことが、大きなポイントだったと感じています。

この取り組みをママ友に話したところ、「うちもやりたい」と一気に広がり、多くの人がお金を払ってでも解決したい課題なのだと知りました。そこで新価値創造プログラム「NOIL」を利用して、飲食店に夕食作りを依頼するサービスを提案することにしました。

 

−Uber Eatsや惣菜店など競合も多いように感じますが?

「NOIL」の審査会でも、社外審査員からはレッドオーシャンな上にライオンの資産も活きにくいと辛口な意見をいただくことが多かったです。「ミールキットもあるし、家事代行もUber Eatsもあるし、なかなか難しいですよ」と。ただ私は1人の生活者として、既存のサービスでは課題解決されていないという実感が大きくありました。私自身あらゆるサービスを利用しましたが、ミールキットですら作るのが大変だったり、Uber Eatsやコンビニだけでは飽きてしまったり。食事は毎日、1日3回家族分があるので、今のサービスでは解決しきれないニーズがあると考えました。幸いなことに社長は、空いている資産や人材をマネジメントしてビジネスできれば面白いのでは、と後押ししてくださり、なんとか採択に至りました。

 

−出前サービスや事前に電話注文する形式と比べて、メリットはどのあたりになりますか?

LINEで簡単に注文できることは大きなメリットです。子育て中のママは平日忙しく、電話番号を調べたり電話をかけたりすることすら手間なんです。1週間まとめて注文するスタイルというのも負担軽減につながっています。細かなことですが、働きながら子育てしているコアターゲットにとっては大きい手間の削減に繋がっています。

 


このような方におすすめ

・新規事業創出に当事者として取り組んでいる方
・新規事業アイデアを探索されている方
・身の回りの課題をどのようにビジネスアイデアに仕立てていけばよいか模索されている方

イベント出演者

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廣岡 茜

ライオン株式会社 ビジネス開発センター ビジネスインキュベーション

2006年ライオン株式会社入社。営業を2年経験後、マーケティング部門の配属となりNANOX等の衣料用洗剤の商品企画に11年間携わる。2019年に社内の新価値創造プログラムNOILに応募した「夕飯テイクアウトサービス・ご近所シェフトモ」が事業化テーマとして採択される。2020年1月よりビジネス開発センターに異動し事業開発し、21年2月よりサービスをローンチした。プライベートでは家事が大嫌いな1児の母でワンオペ育児中。「子育て中でも自分を大事にする社会をつくる」をVISIONに掲げ、公私混同で新規事業に夢中。

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古川 央士

執行役員 / イノベーション事業部 事業部長

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

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