JR東日本7万人社員から1000件超、続々とアイデアが湧き出る新規事業制度の極意

2022.2.1 at Online
JR東日本7万人社員から1000件超、続々とアイデアが湧き出る新規事業制度の極意

導入

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の新規事業開発プログラム「ON1000(オンセン)」は、駅員・運転手・車掌などの鉄道事業部から生活サービス事業部に至るまで全社員が募集対象。東日本で働く約7万人の社員が、「既存の延長線上ではない、“非連続”な事業であること」を条件に事業アイデアを起案できる制度だ。

湧き出る温泉のように新規事業を生み出し続けるチャレンジカルチャーはいかにして作られたのか。事業創造本部で「ON1000(オンセン)」の企画・推進を実行している菊池康孝氏に話を伺った。

index

1. 自社とのシナジーは不要!非連続的な事業を生み出す「ON1000」

2. 500文字でエントリー完了!多彩なワークショップで誰もが参加できる制度に

3. ベビーカーからペットの健康サポートまで。再チャレンジも大歓迎

4. エリア支社の事業部長から各現場への挑戦促進が効果的

5. オープンイノベーション活用で、事業構築力の高い新規事業制度へ

 

1. 自社とのシナジーは不要!非連続的な事業を生み出す「ON1000」

──菊池さんは、新規事業に携わるまでどのような経歴を歩んでこられたのですか?

東日本旅客鉄道(JR東日本)に入社、鉄道事業以外の当社で生活サービス事業と呼んでいる駅ビル事業や駅の構内事業に携わってきました。駅ビルショッピングセンターの運営のフロア運営や、お店を入れ替えるテナントリーシングなど。

その後、三鷹〜立川の高架下12キロの一体開発プロジェクトを手掛けることになりました。駅ビルを開業させたり、高架下の間の空間を作っていったり。いわゆる沿線開発事業です。

2018年に現在の部署で事業創造本部に異動となり、社員から提案を受けた新規事業開発プログラム「ON1000(オンセン)」を企画立案しました。現在は主に、新規事業開発の仕事を行なっています。

──新規事業プログラム「ON1000」について教えてください。

JR東日本・全社員を対象にした新規事業提案プログラムです。温泉と同様、湧き出るように、数多くの新規事業を生み出したいという思いが込められています。また、新規事業の成功率は「千三つ」(せんみつ)と言われるため、1000のアイデアが集まるようなプログラムに、という意図も込めています。

「ON1000」が掲げるテーマは、「既存の延長線上ではない、“非連続”な事業であること」。既存のリソースを生かした事業を新規事業として生み出す企業も多いですが、弊社は非連続な事業で未来の新しいビジネスを生み出すことを目的に置いています。アイデアのジャンルはロボット、ブロックチェーン、エネルギー、SDGs、何でも構いません。

そのため、時間・課題・物理的な場所の軸で、既存事業から大きくスコープを広げるよう呼びかけます。今目の前の課題ではなく、30年後の未来に目を向ける。自社課題ではなく、社会課題や環境問題に着目する。そして、東日本ではなく、日本全国あるいは世界を市場に見据える。幅広い視点でアイデアを起案できる制度になっています。

──そこまで事業範囲を広げる制度も珍しいと思います。どのような背景で新規事業制度を立ち上げたのでしょうか?

JR東日本の鉄道事業は、人口との関連のある収益です。人口が減少すれば移動ニーズが減り、比例して収益が下がります。我々の予測では、2040年にはJR東日本対象エリアにて、3割程度の人口が減少する。少子高齢化社会の今、鉄道以外の事業で収益を生み出すことが急務なのです。

さらに、コロナ禍で鉄道事業に大きな打撃があった。新規事業をどんどん生み出さなければならないという危機感は全社に浸透しており、経営ビジョンでも謳っています。


このような方におすすめ

・大企業の中で新規事業開発プログラムを運営する事務局担当の方
・大企業の中で新規事業創出のミッションを持っている方
・その他、新規事業創出に向けた支援業務に取り組んでいる方

イベント出演者

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菊池 康孝

東日本旅客鉄道株式会社 事業創造本部

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に新卒入社後、駅ビルショッピングセンターのフロア運営、テナントリーシング業務を経験。その後、中央線の三鷹~立川新規高架下一体開発プロジェクトにて駅ビル開発や沿線開発事業に携わる。2018年、現在の所属部署である事業創造本部にて、社員による新規事業開発プログラム「ON1000(オンセン)」を企画立案し、スタート。プログラムの実施、制度設計、推進体制整備に取り組んでいるほか、JR東日本の実際の新規事業の企画・推進を実施している。

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古川 央士

株式会社アルファドライブ 執行役員

青山学院大学卒。学生時代にベンチャーを創業経営。その後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に新卒入社。SUUMOでUI/UX組織の起ち上げや、開発プロジェクトを指揮。その後ヘッドクオーターで新規事業開発室のGMとして、複数の新規事業プロジェクトを統括。パラレルキャリアとして、2013年より株式会社ノックダイスを創業。2015年にはカフェ・バー「Bottles」をオープン。2018年にはイタリアンレストラン「trattoria filo」をオープン。またNPOでの活動や、一般社団法人の理事などを兼任し、数多くのイベントをオーガナイズ。社内新規事業や社外での起業・経営経験を元に、2018年11月、株式会社アルファドライブ執行役員に就任。リクルート時代に1,000件以上の新規事業プランに関わり、10件以上の新規事業プロジェクトの統括・育成を実施。アルファドライブ参画後も20社以上の大企業の新規事業創出シーン、1,700件以上の新規事業プランに関わる。

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